パネルディスカッション:
胃癌リスク者の適切なスクリーニング法

Helicobacter pylori(Hp)感染と胃粘膜萎縮は胃癌の確実なリスク因子であるが、胃がんリスクを層別化するには低リスクの未感染者と高リスクの現感染および既感染者を正しく判別する必要がある。胃がんリスク層別化には血清Hp抗体とペプシノゲン法を組み合わせたABC分類が広く用いられているが、従来のABC分類は現感染診断を目的とした基準値をそのまま適用していたため、Hp陰性判定の既感染者が低リスク群に混入してしまう等の問題があった。対策型検診への適用を考えると、より精度の高いリスク層別化システムの構築が望まれる。そのためには、検体検査の基準値や診断方法の見直しのみならず、胃X線・胃内視鏡による胃炎・萎縮の画像診断と組み合わせるなどの対応が必要である。本パネルでは、胃がんリスク者の適切なスクリーニング法について幅広く議論したい。胃がんリスク者のスクリーニングには、①低リスク者の検診受診間隔延長、②高リスク者の検診受診率向上、③除菌によるリスク低減・1次予防の3つの目的がある。対策型胃がん検診に限らず、個別リスクに基づく胃がん予防対策は今後の重要な課題である。的確な診断方法や適正な運用方法、除菌治療との連携も含め、将来の有効性評価を見据えた議論ができることを期待します。